「何を着ていけばいいかわからない」
30代になって、そう思う場面が増えた。20代のころは「若さ」がある種の免罪符になっていた。でも30代は違う。服に何かを求められている気がする。でも、その「何か」が言語化できない。
この記事は、そういう感覚を持ちはじめた人のために書きました。
ファッション業界でブランドのPRとマーケティングを担当していた私が、服というものを「見せるもの」から「自分を整えるもの」として捉え直すまでの話と、具体的なワードローブの作り方を紹介します。
1. 服は「賢く見せるもの」ではない
30代の仕事服を検索すると、「知的に見える」「デキる女に見える」という言葉が並ぶ。
でも、少し立ち止まって考えてほしい。「賢く見える服」を着ているとき、あなたは誰のために服を選んでいるのだろう。
ファッション業界でブランドのPRを担当していたとき、私は新作のアイテムを「どう伝えるか」を考えていた。ファッションは「何者であるか」を語るメッセージだ。それは他者へのメッセージであると同時に、自分自身へのメッセージでもあると思いました。
「賢く見せる」のではなく、「着ることで自分が変わる」服を選ぶ。その発想の転換が、30代のワードローブを根本から変えます。
2.服が「スイッチ」になった日のこと
大学院に入学して最初の学期、私はある変化に気づいた。
ファッション業界から経営を学びに来た自分は、周囲とは少し違うバックグラウンドを持っていた。コンサルタント、エンジニア、金融系の同期たちの中で、最初は自分の言葉に自信が持てなかった。根拠のない話をしているんじゃないか、という感覚が常にありました。
あるグループワークの発表の前日、私はいつもより少しだけ「きちんとした」服を選びました。
具体的には、いつものジャケットではなく、少し構築的なラインの一着。それだけで、翌朝の自分の立ち方が変わった。声の出し方が、少し変わった気がしました。
服を変えたから発表がうまくいったわけではない。でも、服が「今日の自分のモード」を決めるスイッチになることは、あの日確かに実感したのです。
これはファッション業界で学んだことでもある。ブランドがコレクションを発表するとき、服は「着るもの」ではなく「そのブランドの今季のステートメント(声明)」だ。それと同じで、私たちが毎朝選ぶ一着も、その日の自分のステートメントになりえると。
3.30代の仕事服、何が違うのか
20代の仕事服と、30代の仕事服は、役割が変わります。
20代は「場に馴染む服」でよかった。でも30代になると、会議で意見を言う場面、後輩に何かを伝える場面、取引先と対等に話す場面が増える。そのとき、服は「自分の言葉の重さ」を補強するものになります。
30代の仕事服に求めたいのは、次の3つです。
① 自分が「動きやすい」こと
見た目より先に、着ていて疲れないこと。一日中会議が続く日も、移動が多い日も、体が窮屈にならない服を選ぶ。
② 「この人はちゃんとしている」と思われる最低限の清潔感
派手である必要はない。でも、くたびれた印象を与えないこと。素材感と、サイズ感で大半は解決できる。
③ 着た自分が「少し背筋が伸びる」感覚があること
これが一番大事かもしれない。「この服を着ているから、ちゃんとやろう」と思える一着が、クローゼットにあるかどうか。
4.予算3〜5万円台で作る、30代の仕事ワードローブ
「いい服」は高くなければいけない、という思い込みを一度外してほしいです。
3〜5万円台の予算でも、買い方を変えれば十分に機能するワードローブは作れる。ポイントは「点」で買わず、「関係性」で買うことだと思います。
基本の考え方:7着で回す
仕事服は、多く持つ必要はない。週5日を7着で回すくらいがちょうどいい。それ以上あると、迷う時間が増えて、結局同じ服しか着なくなります。
優先して投資すべき3アイテム
① ジャケット(1〜2万円台) どんなボトムスとも合う、ネイビーかグレーのベーシックカラーを1着。これだけで「仕事モード」に切り替わる。ZARAやユニクロのセットアップラインは、見た目のコスパが高く、働く人の味方ではありますが、CLANEやPLSTなど素材感がよく、きれいめオフィスに自然に馴染むブランドの服もおすすめです。
② トップス・ブラウス(3,000〜8,000円 × 3〜4枚) 消耗品として割り切って、シンプルなものを複数枚持つ。白・オフホワイト・ライトブルーの3色があれば、ほぼどんな状況にも対応できます。
③ パンツまたはスカート(1〜2万円台) ウエストのゴム感が出ないもの、座ったときに崩れないものを選ぶ。ここだけは少し予算をかける価値があると思います。
「1軍」をローテーションする
全部を毎日着る必要はない。「この5着があれば1週間回る」というセットを決めておくと、朝の迷いがなくなる。残りは「大事な日用」の特別枠にします。
5.LITERA MODE 的、服の選び方の基準
最後に、私が服を選ぶときに使っている基準を紹介します。
「この服を着た私は、何ができるか」
試着室で自分に問う言葉として、これが一番使えると思っている。「かわいい」「安い」「流行っている」ではなく、「この服を着た私は、何ができるか」。
服は装飾ではなく、自分を定義するための言語だ。30代のワードローブを整えることは、自分がどう在りたいかを、毎朝少しずつ決めていく行為でもあると思います。
クローゼットを開けるたびに「これを着て行きたい」と思える一着が増えていくこと。それが、30代の仕事服を見直す、一番の目的だと思っています。

